あんまり政治的な資料を見た感想って書かないんだけど、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」見て、うーんって思っちゃった。
「責任を持って成果が出るまでやり抜く」って書いてあるのね。すげーカッコいい叩き台になってるのはいつものことかもしれんけど。じゃ、実際アレ(某機構)の総括をきちんとおやりになった方がいいのでは?って国民からしたら思っちゃいますよね。
で、個人的に思ってるクールジャパンのことについて書く。
勝手に生まれる環境の方がよほど重要
日本型エンタメを普及させるために必要なのは、政府が有望な作品や分野を選ぶことより、クリエイターが「とりあえず気軽にエイヤで作ってみる」ことのできる環境を広げることじゃない。
制作コスト、権利処理、資金調達、海外展開、労働環境などの障壁を下げ、大量の試行錯誤から自然にヒットが生まれる土壌を作ることは、日本のコンテンツ産業には適していると思ってる。
行政が扱いやすい日本文化だけを見ない
JRPGやアニメなどのコンテクストは確かに重要だけど、日本のキャラクター文化や「kawaii」の海外受容を考える際には、
同人、ビジュアルノベル、成人向けコンテンツなど、行政が正面から扱いにくいサブカル要素を相当に無視できないでしょ。ジャパニーズヘンタイは実際つよいんじゃない。
特に中国圏を含む海外では、こうした領域がジャパニーズカルチャーへの入口になっていることは暗に認めざるを得ないと思う。
だからといってエログロ表現を国策として推進する必要ないんだけど、文化形成に寄与してきた合法的な領域を、潜在的には政策上存在しないものとして考慮するべきではないとは思うよね。
流通の問題と表現の問題を分ける
エログロ表現には、年齢確認、人権保護、違法コンテンツの排除など、当然ながら厳格に扱うべき問題があるんだとは思ってる。個人的に表現の自由戦士みたいなことは思わない。FF7Rの蜜蜂の館とかって結構良い表現というか、あれは演出として素晴らしいと思ったんでね。
一方で、(日本では)合法な表現が、海外の決済会社や配信プラットフォームの判断によって、一律に国際的流通から排除されている事実はとりわけ深刻に考える必要があると思ってます。直接的に言えばFanzaとかFantiaなんだけどサービスに対して言いたいわけじゃなくて、決済網が閉じられていることを仕方ない、で終わりいいのってこと。
私はクールジャパンを広めたいなら、最も重要な点はここじゃね、って結構思ってる。
日本の価値観を海外に押し付けるのではなく、合法性、年齢区分、レーティング、ゾーニング、人権・宗教的配慮を踏まえた上で、我が国としての「国際的な流通・決済の中立性」をどう確保してくかが行政が検討すべき最重要課題じゃないすか。
クリエイターが権利を保持できる環境
海外展開を促進するなら、作品を売ることだけでなく、制作側がIPを持ち続けられることも重要でしょう。
地域・媒体・期間ごとのライセンスなど、権利をヘタに売り渡さない契約のひな形や交渉支援を行い、
海外プラットフォームへの権利の丸ごと譲渡を減らすことは、行政の範疇だと思う。
国内市場の収益循環は軽視するべきでない
コンテンツ産業は、必ずしも海外展開だけで成立しているわけじゃない。
例えば遊技機では、IPの利用許諾が国内で収益を生み、それが次のコンテンツ制作を支える主要な資金源の一つになっていることは明らかな事実。
表沙汰お国が語れないギャンブルそのものを大っぴらに推進する必要はないが、国内の様々な市場がIPを収益化し、
その収益が次の創作に還流する重要な構造を分析することは、コンテンツ政策を考える上で見逃すべきではないんじゃないかね。
中国を競合相手であると同時に、日本文化の受容者として認識する
PC・スマホゲームを基幹に据えるのであれば、明らかに中国は重要なプレーヤー。
その中国のゲーム産業が強くなったのは、政府による「選別」の成果とはいえない。むしろ逆も含めた結果。
まさに我が国としては止めたい、氾濫しまくった海賊版が促したオンライン化、規制による海外進出、彼らがこっそりと出会った日本文化の吸収。たぶんクリエイターとしての彼らの感動はそりゃすごいんじゃないかなって想像に難くないじゃないですか。
そこに巨大市場・強力な技術投資と人材育成が重なって強力なメーカーが生まれた、と見る方が実態に近いのだと思う。
日本は中国の統制を真似る必要はない。むしろ、自由で民主的が是の日本だからこそ持つ同人・インディー・ネット文化などを含む、 政府が完全には管理しきれない自由な創作環境そのものを競争力として維持することが重要だと思いますわね。
結局のところ、今のところ助成金政策以上にはなんも見えない。
個人的に興味深いのは、大手企業がズラッと並ぶ中で、任天堂がほぼいないのは興味深いことなんですね。
オリンピックなどのCMにマリオは登場しているのだから、確信犯だよね。当然話自体は知ってるんだけど、支援必要ないと判断されたんだろうと。
(ポケモン以外の自社IP開発を悲願みたいにしてるゲームフリークなんかが、助成金の採択リストに入ってないのも非常に驚いた。落ちたのか、そもそも応募してないのか、分からないけれど)
彼らはゲーム産業のトヨタじゃない。 エンタメを車並みの産業にするぞと意気込むなら。
まず、最も世界で最も成功しているIPを確立している企業が、国家的支援をほとんど必要とせず、
自前のIP展開で全てを成功させている事実を、学者先生達は考慮せねばなるまい。
やっぱ任天堂とか、庵野監督のカラーとか、こういう構築が上手いですよね。
まず分析すべきなのは「なぜ支援が不要だったのか」でしょ。
そこを十分に解明せず、外部から補助金や海外展開支援を追加するだけでは、
成功企業の成功要因を再現するどころか、単に「成功している市場に後から政策を乗せる」ことになる危惧はあるんだと思う。
個人的には「売上を上げたい」という話が強調されすぎて(20兆産業というのもずいぶんブチ上げてるが、特にゲームと音楽はフィージビリティが薄すぎる異常値だと思う)、
「回収率が低い」という指摘が大局に埋没しているように見えすぎる書きっぷりで、540億溶かした施策の後釜であることを踏まえると、実に不安な施策です。
ここで思い出すのはコピーコントロールCDみたいな業界行動のトラウマですよね(子供の頃の思い出懐かしい…)
ああいうことをしても得しませんしね。
とりあえず「責任を持って」と書くからには、そのようにして頑張ってほしいと思います。
追記
そもそもこれは2023年の経団連提言を踏襲したものですが(経産省のKPIがMAXの方を取っているのは政治受けを狙ったものなのか、であればオカシナ話だ)、なので結局大企業向けの色が出ていることはある種必然的な現象だと思います。辿ってみると当時はweb3などの提言もあり、そもそも移り変わりの早い時代に見合った施策なのかは今後に注目する必要があるんでしょう。
どうでもいいですが、コンテンツ界の大谷翔平をつくりたいようです。エリート的な英才教育によって。うーん、秋元康氏みたいなイメージなんでしょうか。
私の青春期に見た「そういう方」はかの新海誠で、それはDoGAコンテストであり、ZUN氏や竜騎士07氏はコミケといった草の根であることはぶっちゃけ忘れていません。